テレワークという働き方が一般化して数年。出社しなくても仕事が進む環境が整う一方で、「以前よりも生産性が下がった気がする」と感じている方も少なくないのではないでしょうか。
特に、社会人として10年以上のキャリアを積んだ30代のビジネスパーソンにとっては、業務の質やリーダーシップ、チームとの関係性といった、単なる作業以上の“仕事の幅”が広がっている分、在宅環境でのパフォーマンス維持に悩みやすい傾向があります。
本記事では、これまでの経験やスキルを活かしながら、テレワーク下でも安定して成果を出すために取り入れたい“習慣化すべきコツ”を紹介します。自分のスタイルに合った方法を見つけ、テレワークをもっと快適に、もっと効果的に進めていきましょう。
テレワークで生産性が落ちる理由とは?
テレワークという働き方は、多くのビジネスパーソンにとって新しい自由と可能性をもたらしました。通勤時間がなくなり、自分のペースで仕事を進められるというメリットがある一方で、「以前よりも集中できない」「成果が見えづらくなった」といった悩みも聞かれます。
特に、10年以上のキャリアを積んできた30代の社会人にとっては、在宅勤務の環境は単なる“働く場所の変化”ではなく、“仕事の進め方そのものを再構築する必要がある”ほどの大きな転換点となっています。ここでは、テレワークで生産性が落ちてしまう主な理由を、3つの視点から深掘りしてみましょう。
(1)コミュニケーションの量と質が激変する
オフィス勤務では、意識せずとも会話や情報交換が発生していました。すれ違いざまの雑談、会議後のちょっとした意見交換、隣の席から聞こえてくるやりとり――これらの“非公式な情報共有”が、実は仕事を円滑に進めるための重要なエッセンスになっていたのです。
テレワークでは、そうした偶発的なやりとりが一切なくなります。その結果、「ちょっと聞いておきたかったことを聞けないまま仕事を進めてしまった」「相手の温度感や表情がわからず、対応が遅れた」といったすれ違いが生じやすくなります。メールやチャットでは補えない“空気感”の情報が、私たちの意思決定や判断にどれだけ影響を与えていたのか、実際に離れてみて初めて気づいた方も多いのではないでしょうか。
(2)オンとオフの境界が曖昧になり、集中力が低下する
仕事環境としてのオフィスには、無意識のうちにスイッチを入れる役割がありました。家を出て、電車に乗って、職場のデスクに座る――この一連の流れが「さあ仕事だ」と自分に言い聞かせるスイッチになっていたのです。
しかし、自宅ではその切り替えが難しくなります。朝起きてすぐにPCを開くような生活では、気持ちが完全に仕事モードに切り替わらず、スタートダッシュに時間がかかります。さらに、仕事とプライベートが物理的にも精神的にも混在してしまうことで、集中が続かなかったり、必要以上に働いてしまったりと、どちらにも悪影響を与えるリスクがあります。
特に、真面目で責任感のある方ほど「メールの通知が来たら夜でも返信してしまう」「なんとなく休むことに罪悪感を感じてしまう」といった傾向に陥りがちです。こうした境界の曖昧さは、知らず知らずのうちにパフォーマンスを低下させる要因となります。
(3)“慣れ”と“油断”がもたらす自己管理のゆるみ
10年以上の社会人経験があると、ある程度の裁量や自由が与えられる場面も多くなります。実績もあり、自分のペースで進めることに慣れている分、在宅勤務でも「このくらいなら大丈夫」と自己判断しながら動く場面が増えていきます。
もちろん、それは大きな強みでもありますが、一方で油断やマンネリ化を招く原因にもなりかねません。定例ミーティング以外は誰にも管理されない日々が続くと、徐々に仕事のペースが緩んでしまい、「気づけば1日中、優先順位の低い作業ばかりしていた」ということも。
また、自宅という“快適すぎる環境”が、集中力をそぐ要素にもなります。スマートフォン、テレビ、冷蔵庫……これらが常に手の届く場所にあることで、無意識に集中が途切れてしまう瞬間が増えていきます。プロフェッショナルとしての自覚があっても、環境が整っていなければ、本来のパフォーマンスは発揮しづらいのです。
「気づかぬうちに、生産性が下がっている」という落とし穴
テレワークでは、上司や同僚の目がないぶん、自分自身の行動を客観的に振り返る機会が減ります。そのため、「自分ではうまくやっているつもりでも、実は成果が出ていない」という事態にも陥りやすくなります。
逆に言えば、この構造を理解し、意識的に“働き方をデザインする”ことができれば、テレワークでも十分に高い生産性を発揮することが可能です。
次章では、こうした課題に対処するための具体的なアプローチとして、キャリアを積んだ社会人が実践すべき「習慣化のコツ」を紹介していきます。