【解説】会議を円滑に進めるファシリーテータの役割とは?

ファシリテーターやファシリテーションという言葉を聞いたことはありますか?

会議を円滑に進める上で重要な役割、それが「ファシリーテーター」です。

昔ながらの会議のイメージとしては、「偉い人がずっと話しているか、怒っている」「意見を言うと、出る杭は打たれる」「偉い人の一言で結論が覆る」といったネガティブなイメージがありませんか。日本人は意見を言うことを控える人が多く、会議での発言を避ける傾向があるため、発言者が偏ることで会議本来の目的を達成できていないことが多いとされてきました。

そこで昨今、「ファシリテーター」という役割に注目が集まり、ファシリテーションスキルについての書籍も多く出版されています。

今までファシリテーターという言葉を聞いたことが無い方でも、この記事を読んで頂ければファシリテーターが果たすべき役割や、求められているスキルが分かります。

目次

ファシリテーターとは?

「ファシリテーター」とは、そもそもがファシリテーション(facilitation)という英語の単語から発生したものです。

ファシリテーションは「行ないやすくすること」「スムーズにすること」という意味を持っていて、facilitator=ファシリテーターというのは「facilitationをする人」に該当します。「何かをし易くする人」「物事をスムーズに推進する人」みたいな感じと捉えて頂ければ、イメージしやすいのではないでしょうか。

すなわち、ファシリテーターとは、集団の中で敢えて集団活動自体には参画しないで、その他の参加者の活動を中立的に支援する人を指し示しています。

ファシリテーションが広まった背景とは?

日本は世界でも類を見ない民俗的な同質性を特質としていましたが、民族や文化、宗教、言語、国籍、人種などの多種多様に富む社会が広がりを見せるなど、今日に至る迄の環境は変化しつつあります。

他にも、企業などのビジネス組織の構造に関しては、縦社会から横に広まるネットワーク型組織へと変容して、価値観の違う人たちとの交流拡大が必要不可欠となっています。

そのような時代の波から、縦社会の特徴である上意下達ではなく、多様性を持った集団として皆で決める答えが必要とされています。

序章のような「偉い人が結論を出す」ような会議ではなく、「若い人も含めて、より良い結論を出す」ことが求められているのです。

このような変化により、人の意見を引き出し、多様な意見を纏め上げて1つの結論に導く方法であるファシリテーションに注目が集まりました。

会議中のファシリテーターの役割

会議中のファシリテーターの存在意義は「会議をスムーズに進行する人」ということにつきます。

会議の司会者としての役割を果たし、参加者たちの意見表明を促したり、意見が対峙した際には方向性を調整しつつ、その他の参加者たちのスムーズな理解を促進したりします。

ファシリテーターというのは、会議中に自分の意見や主張を発言することは求められてはいませんが、会議の内容が議題やテーマから外れないようコントロールしたり、意見内容のゆがみをなくし、方向修正をしたりすることがメインの役どころになります。

会議においてはファシリテーターとは別に議長(又は発起人)が存在することが多く、議長(発起人)は意見を申し述べたり最終的な結論を出すといった役割を担います。一方で、ファシリテーターはそういった権限が一切無い場合が多く、あくまで議長(発起人)のサポートに徹します。

会議の一般参加者が「意見を申し述べて討議する」役柄で、議長が「そうした意見にベースを置いて最終判断を下す」役柄であれば、ファシリテーターというのは「参加者や議長のサポートを行なう」「会議進行をコントロールする」役割を果たします。

ファシリテーターとしての準備と心構え

ファシリテーターとは、ファシリテーション(会議の操縦)の役割を担う人と説明しましたが、その役割は会議中だけではありません。

会議中に重要な役割を果たすためには、事前に準備も重要なのです。

会議の目的や系統にフィット合わせた準備

会議には、大まかに分けて「コミュニケーション会議」、「議論会議」、「意思決定会議」の3種類が存在します。事前準備は会議の目的に合わせて、実施する必要があります。

コミュニケーション会議

参加者に情報をシェアすることが目的となっています。報告や連絡事項、知識共有の場所として利用している企業も見られます。

この会議では結論を出すことが目的ではないので、参加者がシェアされた情報をきちんと理解することが重要です。

ファシリテーターは参加者が質問しやすい空気づくりに努め、場合によっては最初の質問をファシリーテーターが行えるように事前に質問を考えておくと良いでしょう。

その他、幅広い範囲の情報共有の場合には質問に回答する役割は誰がに担うのか、事前に確認することが重要です。発表者が質問に回答できるとは限りません。

参加者の質問に対して、だれも答えないと全体のモチベーションが下がります。回答者が自身の役割を認識していないこともありますので、気を付けましょう。

議論会議

結論を出すのではなく、意見集約を目的とするような会議もあります。企画発案や部署の問題を取り扱うようなケースでは会社のポリシーやマネジメントに関係する傾向が強いことが理由で、管理職の方が加わることがよくあります。

ブレインストーミングと呼ばれることもあり、立場の垣根を越して発言可能とするために否定的意見は禁止といった会議手法を取り入れている企業もあります。

議論会議では賛同、否定の意見や、主題からやや飛躍した意見、思いつきに近い意見など、意見(発言)がバラエティーに富んでいるケースがあり、ファシリテーターは会議テーマから逸脱しないように気を配りつつ、活発に意見が出るように心がける必要があります。

ファシリーテーターは発起人と会議テーマや議論がどこまで広がっても良いのか、事前に確認しておくことが必要です。

意思決定会議

意思決定会議では、議論会議の延長線にあるケースと、単純に説明者が施策を説明した後に意思決定を行うケースがあります。どちらにも共通して言えることは、意思決定会議は必ず管理職や経営者といった決定権を持った人間が参加しており、そこで決定された事項は何かの方針や行動の根拠となるものです。

ファシリテーターは意思決定を円滑に行えるように、参加者の意見をきちんと引き出すことが求められます。

そのためには、会議内容と参加者の特性を理解し、決定権者は誰なのか、意見表明をしてもらうべき人物は誰なのかを事前に考えておくことが重要です。意見を求められなかった利害関係者は、会議の終盤に「やはり、さっきの提案は・・・」とちゃぶ台返しのような事件を起こすことがあります。

そうなるとファシリテーターとしての任務は失敗と言えるため、必要な人から必要な意見を引き出すことが、何よりも重要です。

会議にあたっての中立の立場

議題に対し、賛成反対の両方の意見が拮抗し、収束がつかない状態となった経験がある方はいませんか?

会議をスムーズに行うには双方の意見を聴き、意見の円滑化が必要となります。また、発言内容によっては具体的に話し合いを重ねるべきか、またはあいまいに話をまとめるべきかの気遣いが求められます。

参加者が変われば、言葉の意味が全く異なるケースがあります。一例として、これでOKだろうという発言があったとき、受取り手の中においては、許可されたと類推する人もいれば、問題点が残存していると捉える人もいます。このように各個人で言葉への定義が異なることを意識し、ファシリテーターは曖昧な発言が誤解を生まないように、「OKというのことは、承認するということで宜しいですか?」と質問をして、関係者の理解を深める必要があります。

ファシリテーターは中立の立場である必要がありますが、質問が禁止というわけではありません。あくまで曖昧な状況を補うためであったり、会議テーマから外れているようであれば積極的に質問や発言をすべきです。

会議進行時のハンドリング

ファシリテーターは参加者の発言を促すだけではなく、きちんと考えてもらうスキルが求められます。参加者に分け隔てなく考えを聞くことは肝心ですが、意見交換会で終了する会議は非生産的でしょう。

まずは会議の目的を明確化し、議題に対し考案する時間を設定してみましょう。参加者の意識を会議に向けることで、相手の意見を聞くという意識が生まれ、理解が深まります。

また、会議中はホワイトボードや付箋、メモを活用して、出てきた意見をビジュアル化しましょう。

会議中に意見を纏める際に、重要なヒントとなります。

ファシリテーターに必要不可欠なスキル

ファシリテーターというのは、時間、参加者、議論の内容だったり、同時進行の形で意識しておくべき事柄がたくさんあり、スピーディーなファシリテーションを行なっていくためには、広範囲に亘るスキルが要求されます。メインのスキルを列挙していきましょう。

  • 参加者や現場の雰囲気を憶測するスキル
  • 否定せずに、主体的に聞く傾聴スキル
  • 意見の呼びかけや考え易さに通じる質問を行なうスキル
  • 簡潔に要約し、記録するスキル
  • 論理的に要約し、結論に結びつけるスキル
  • プロセスのマネージメントスキル
  • 時間のコントロールスキル

このようなスキルがファシリテーターの役割の中でどういった具合に活かされているのか、チェックしていきましょう。

会議のファシリテーターの役割

会議においてのファシリテーターのベーシックな役割は次にあげる4つになります。

適切な場所づくり

人数や議題に合うスペース(部屋)の用意も求められますが、雰囲気作りは必要不可欠です。その段階で留意することは次にあげるポイントです。

  • 議題を周知する:参加者の意見が出やすいように、話し合われる項目を周知する。
  • ルールをチェックし順守させる:発言中に遮らない、意見に関しての否定反応が出てこないようにルールを周知する。また、ルールに反しているときは抑制あるいは意見者を保護する。
  • 中立の立場:進行中に関しては、どんなときも中立の立場をとり、可能ならば多岐に亘る意見を吸収する。

意見を引き出す

可能ならば多岐に亘る意見を引き出し、参加者全員の能動的な参加を推し進める。意見を出しやすくするためのアクションを取るのと同時に、話が逸脱した場合の方向性を修正します。

  • 全体への配慮および理解へのサポート:発言者の意見に偏りがないように、意見を出しづらい人、発言していない人にも意見表明を促す。各々の意見をみんなが理解、納得できるようにする。
  • 発言者のサポート:否定しない聞き方やあいづちなどの方法で、話しやすさを供する。話の最中はせかさず、粘り強く聞き、話の着眼点が全員に理解できるようアシストする。
  • 幾つもの意見の尊重:既存の意見とは違う意見を歓迎する。

意見を絞り込み、整える

時間経過についての意識をいつもながら持って、的を射たタイミングで出た意見を調整します。ファシリテーターが自ら回答を見つけるのではなく、参加者主導に徹することが大事です。この状況で、合意を形成するための意思決定をアシストします。

  • 対話の促進:参加者同士の対話を促進する。
  • 意見の整理:提示された意見を要約し、構造的に調整していく。
  • 合意形成のサポート:適時チェックをしながら、全員が一致した解釈に従って推し進める。

結論を要約する。

参加者主導で話し合ったことを結論として纏め上げることが必要です。

  • 振り返り:話し合いの状態を簡潔に振りかえる。
  • 結論の要約と理解のチェック:最初のゴールや目標に照ら合して、結論をまとめ上げる。すべての人が完璧に理解、納得していることをチェックする。
  • それ以降のアクションを認識させる:結論に対し、参加者毎にそれ以降のアクションを明確に認識させる。

このように場をセッティングし、参加者主導で議論が進行するようにサポートし、意見を集約しながら、結論を取りまとめて、その次の行動を理解させることがファシリテーターに要求される基礎的な役割になります。

まとめ

ファシリテーターとは、グループやあるいは組織で物事を展開させていくときに当該の進行を円滑化し、目的を実現出来るように、中立的なポジションから喚起する役割を果たす人の意味になります。

ファシリテーターにおいては、次にあげるようなスキルを欠かすことが出来ません。

  • 参加者や現場の雰囲気を読むためのスキル
  • 否定せずに、主体的に聞く傾聴スキル
  • 意見喚起や考え易さに直結する質問をするスキル
  • 簡潔に要約、記録するスキル
  • 論理的に要約、結論に結びつけるスキル
  • プロセスのマネージメントスキル
  • 時間のコントロールスキル

ファシリテーターが会議の進行役をしていくケースにおいての基礎的な役割と、留意事項は次にあげる通りです。

適切な場所づくり・議題の周知
・ルールをチェックし、順守させる
・中立の立場
意見を引き出す・全体への配慮および理解のサポート
・発言者のサポート
・多種多様な意見の尊重
意見を絞り込んで、整理する・対話の促進
・意見をまとめる
・合意形成のためのサポート
結論を要約する・振り返り
・結論の要約と理解のチェック
・それから後のアクションを認識させる

この際、ファシリテーターは次にあげることに気を付けなければなりません。

  • 自分の個人的な考えや意見を出さない
  • 決定をしない

ファシリテーションを上手く行なう為には、ファシリテーターだけでなく、出席者もファシリテーションについてわかっていることが必要です。これによって、能動的な協力体制が整備され、会議やプロジェクトなどといった目的を成し遂げることが出来るのです。

ダイバーシティが進展されている現在、全く異なる考え、意見の対立を解消しながら、その次の行動に結び付けていくスキルをもち合わせたファシリテーターの存在は必要不可欠です。ぜひ、ファシリテーションスキルを習得してみてはいかがでしょうか。

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