現代における企業経営の重要キーワード「VUCA」とは

ここ最近、新型コロナウイルスを始め、豪雨災害など予期しないことが次々と起こっています。

た、AIの進化など科学技術の発展するスピードもめざましく、数年先の社会がどう変化しているかを予測することも難しい状況です。

そんな状況を表す言葉に「VUCA」があります。

ここでは、「VUCA」とは何を意味するのか、ビジネスにとって「VUCA」の時代を生き抜くには何が求められているのかをじっくり見ていきましょう。

目次

1.VUCAとは

VUCAとは、社会の不安定な状況を4つのキーワードで表し、それぞれの頭文字をつなげたワードです。

  • 「V」は「Volatility」(変動性)
  • 「U」は「Uncertainty」(不確実性)
  • 「C」は「Complexity」(複雑性)
  • 「A」は「Ambiguity」(曖昧性)

この4つのワードの頭文字を取って「VUCA」、日本語で「ブーカ」と呼んでいます。それぞれのワードについてさらに詳しく見ていきましょう。

変動性を意味するVolatility

ITの技術が急速に進歩を遂げる現在の社会において、それに伴って技術的な面にとどまらず社会の仕組みや価値観まで猛烈なスピードで大きく変化していっています。これから先どうなっていくのか見通しが立ちにくい状況ですから、変動性要素と考えられるのです。

ただ、変化の激しい状況といっても必ずしもデメリットばかりでなく、この状況を利用してこれまで誰も考えもしなかった新しいビジネスも生まれているのです。それら新しいビジネスは、新しい社会の仕組みや価値観を生み出すことにもつながっています。この流れに置いていかれないためには、普段から最新の情報を集め、それらを自由な発想で組み合わせる柔軟性を養うことが必要です。

不確実性を意味するUncertainty

すでに日本型の雇用は終わりを迎え、終身雇用や年功序列を採用する企業も少なくなりました。つまり、安定した雇用を保障してくれる時代が終わったということです。その代わり、どんな成果を出したかを常に評価される時代になりつつあります。

一寸先は闇ともいえる不確実な時代において生き残っていくには、自社を取り巻く社会の状況を把握し、新しい情報にもなるべくたくさん触れて、知識を吸収しながら成果を上げていかなければなりません。時代の不確実性は、ビジネスパーソンだけでなく現代を生きるすべての人が感じる要素と言えるでしょう。

複雑性を意味するComplexity

グローバル社会と言われて久しいですが、経済も同様にグローバル化が進んでいます。そのため、一つの企業が解決できることが少なくなり、全世界規模でさまざまな要素が複雑に絡み合っているのが現状です。

価値観やイデオロギーの異なる人同士、組織同士の接触が増えることによって、今まで単純に解決できた課題解決も、様々な見方、考え方を踏まえたアプローチが求められるようになりました。

この状況を生き抜くには、複雑な要素を丁寧に紐解きながら何が物事の本質なのかを見極める力が必要になります。

曖昧性を意味するAmbiguity

全世界規模で複雑にいくつもの要素が絡み合い、猛烈なスピードで変化していっています。その先の未来もおそらく新しい変化が待っていることは間違いないでしょう。

そんな時代の只中において、「これをすれば大丈夫、問題はすべて解決できる」というような答えは存在しません。答えが見つかったように思えても、次の瞬間にはその答えが通用しないという曖昧な時代なのです。

2.リーダーや管理職が日々心がけるべきこと

そのような不安定要素がさまざまに絡み合うVUCAの時代において、リーダーや管理職はそれを踏まえて日々心がけていかなければならないことがいくつもあります。それを順に見ていきましょう。

まず、VUCAから何がわかるのか、企業にとって何が不安定要素なのかを探ることが必要です。企業におけるVUCAの4つのそれぞれの要素について、情報をなるべくたくさん集め、社内で共有し、理解を得ることが重要です。

人間がどんなに慎重にシミュレーションしたところで、人間では予測がつかないほど、時代の変化は不確実で複雑、曖昧性を増しています。主観的や印象に左右されることない、AI技術によって客観的に意思決定を行うようにすることも選択肢の一つです。

確かな情報をできるだけ多く、幅広く集めることが出来る情報収集能力と、集めた情報の真偽を見極め、適切な解答を導き出すことが出来る情報分析能力が、今後のリーダーに求められる資質と言えるでしょう。

続いて、どのように対応していくか対策を考えることが必要です。情報収集と分析によって、どう対応することが自社にとって有益となるかを考えます。社内全体で情報を共有しつつ、具体的な方法を考えていきましょう。

但し、VUCAの時代には様々な情報や課題、利害関係が複雑に絡み合っていることが多いので、一つ一つを精査、分析し、検討しながら施策へと落とし込むには多くの負担が伴います。それらの負担を少しでも軽減するためにIoT、RPA、AI技術といった最新のテクノロジーの活用が求められます。最新テクノロジーと従来の発想とのバランスを判断することが、リーダーと管理職にとってミッションとなる日がやってきています

情報を収集分析し、対策を考えても、課題がすべて解決できるとは限りません。しかし、まずは考えだした対策を実行に移すことが重要です。

どのように実施することが効率的であり、自社にとって効果的であるかを考える必要があります。日常業務でPDCAを回していくことはすでに一般的になっていますが、VUCAに向けた取り組みでも同じようにPDCAのサイクルを通じて、施策を高いレベルで実施できるように工夫することが大切です。

企業全体でVUCAの対応を考えるには、専用の機会を企業全体で作ることも有効です。

経営陣や管理部門では、具体的な数値を見据えながら日々業務に取り組んでいるため、VUCAを意識した対策も立てやすいでしょう。しかし、他の間接的な部門だと、VUCAについて考える機会は少ないのではないでしょうか。

企業全体で定期的に考える機会を作り、部門間の差を無くすことが出来れば、より深い対策を打ち出すことが出来るのではないでしょうか。

3.実際に不確実な出来事が発生した場合、リーダーや管理職はどう行動すべきか

VUCAの時代、明日に何が起こるのか、確実なことは誰にも予想ができません。そんな時にリーダーや管理職はどうすればよいのでしょうか。

ずばり、予測できない事態が発生しても、動じることなく適切な意思決定を行えばよいのです。そのためには、具体的には以下のステップをたどります。

不確実な出来事が発生して迅速な判断が求められる状況になったら、まずは立ち止まることが大切です。やみくもに進んでも良い結果にはなりません。じっくり考えるための時間を作ることが先決です。

次に、現実的に考え得る選択肢を挙げ、それぞれについて検討を加えます。不測の事態なのに事前に決めた計画を進めようとしても、時間と労力の無駄に終わるだけです。いったん白紙に戻し、不確実な出来事に対して現在、どのような情報や資源が手元にあるかを確認し、望ましい結果に至るために持てるリソースをどう活用すればよいかを考え、選択肢を組み立てていきます。

組み立てた選択肢を検討して、選ぶべき道が決まったら、その道を貫きます。当初の計画と比べて理想的な判断とはならないこともありますが、不測の事態における最善の選択をしたのですから、後悔したり迷ったりする必要はありません。割り切って前進しましょう。

現代のリーダーや管理職は、社会がどのように変動するかまったくわからない不安定要素ばかりの状況において、進むべき道を決めなければなりません。進むべき道が決まったら、そのための計画や戦略を立て、あとは躊躇せずに前進すべきです。もちろん軌道修正が必要なこともあるでしょう。新たな変化が起きた時には、また違う判断が求められることになりますし、その判断の難易度も高くなります。そんな時に頼れるのが自分自身の判断軸です。

誰でも何かを決断する時は自分の中の判断軸に従って物事を判断しています。ただ、その判断軸を自分でもよく理解していない人もいるでしょう。自分の判断軸がどうなっているかを理解するには、これまでやってきた大きな判断や難しい判断を振り返ることがヒントになります。

過去に下した判断に共通するものが見えたら、それが自身の判断軸だということです。その判断軸を自分自身がしっかり理解しており、それに基づいてあらゆることを判断していけるのなら、それは不確定な要素にも動じない大きな強みになります。

4.経営を取り巻く環境の複雑さや曖昧さへの対応

VUCA時代に意思決定や判断の遅れは命取りになります。経営では迅速な意思決定とその実行が常に求められるでしょう。実行した結果から、今度はフィードバックを得て、それをもとに軌道修正を施し、新たな実行に移します。このようなサイクルをとにかく迅速に繰り返すことが必要です。

ビジネスチャンスを見つけたと思っても、実行までに時間がかかっていてはビジネスチャンスでなくなってしまいます。現代の複雑で曖昧な環境においては、見つけた瞬間は有望と思ったビジネスチャンスも、あっという間に陳腐化することもありますし、先に競合他社が押さえてしまうこともあるでしょう。ですので、意思決定や判断は迅速に行うとともに、それにもとづいた実行も可能な限り迅速に行わなければなりません。

そのためには、考えるたびに立ち止まるのではなく、とにかく走り出し、走りながら次を考えていくという姿勢が求められるでしょう。精度は粗くなってしまいますが、多少粗くても実行するまでのスピードが何よりも大切です。

迅速に実行に移すには、その材料となる情報を日ごろから収集しておくことが必要です。経営者なら現場とも日ごろから密に接し、現場への感度を高めつつ備えておきましょう。同時に、現場のリーダーや管理職からタイムリーに情報が届くよう体制を整えておくことも大切です。具体的には、責任や権限がどこにあるかをクリアにし、スピーディーに情報が上がってくるようにします。それをやらずに旧来の曖昧な状態のままでは、経営者の意思決定の遅れのために勝てない事態にもなってしまいかねません。

実行までのスピードを迅速にする方法として、専門のチームを作ることが挙げられます。企業にとって初めてのことに取り組む場合、特に有効です。知見や経験のある人を集めて専門チームを作り、その実行の権限も持たせます。実際、最近では、ネット関連の事業を展開するために専門部署を設ける企業も増えつつあるようです。

企業にとって革新的なことをやろうと思っても、旧態依然の組織の状態では実行に移すことが難しいこともあるでしょう。せっかく意思決定しても、そのような組織においては中途半端になってしまいます。それより、相応の知見と経験を備えた人材による専門チームに実行を任せる方が、迅速さが高まることは確実です。

特に、AI技術など新しい技術に関連するテーマや、今まで自社で扱ったことのないテーマに新たに取り組む場合には必須と言ってもよいでしょう。既存の組織に任せても、そもそもそのための知見も経験もない状態では実行に移せません。また、既存の組織ではしがらみや慣習などが邪魔になることもありますから、VUCA時代に対応するには専門チームの設置が有効です。

社内に知見や経験を持つ人材がいない場合は、外部のリソースを積極的に活用しましょう。外部の専門家や他社の知見・経験を最大限に活かすことがイノベーションにもつながります。実際、今の自動車メーカーは、ほとんどどこも自社単独ではなく他社と協業して開発を行っているぐらいですから、他の分野でも同じように、外部と連携して活用できるものを最大限に活用することが望ましいのではないでしょうか。それが、経営を取り巻く複雑さや曖昧さに対応する有効な戦略となるはずです。

5.まとめ

VUCAの時代において、日本だけでなく世界中の企業が生き残るための対策に躍起になっています。変化の激しい時代に取り残されないためには、そういう不確定で曖昧な時代にあることを強く意識し、どのように対応するかを常に考えながら情報を集め、分析し、実行に移していくことが大切です。これを良い機会として、自社における経営のあり方や人材育成などについて検討し直してみてはいかがでしょうか。
(2020年現在)

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