VUCA時代に求められるリーダ像とフレームワークとは

2016年に開催されたダボス会議など、世界の経済会議でここ数年話題になっているのが「VUCA」です。日本語では「ブーカ」と言って、社会や経済の不確定で不安定な状況を表す言葉としてビジネスシーンでも使われるようになってきました。

企業のあり方や経営方針においても、今ではVUCAを前提とした考え方が求められるようになっています。このような状況で、何がリーダーに求められているのでしょうか。

目次

1.VUCAの意味とは?

VUCAとは、社会の不安定な状況を4つのキーワードで表し、それぞれの頭文字をつなげたワードです。

  • 「V」は「Volatility」(変動性)
  • 「U」は「Uncertainty」(不確実性)
  • 「C」は「Complexity」(複雑性)
  • 「A」は「Ambiguity」(曖昧性)

1990年代にアメリカで軍事用語として使われていた言葉ですが、最近では経済状況や企業のあり方、個人の将来の働き方やライフプランに至るまで、さまざまなことが予測不可能であるため、VUCAという言葉で語られるようになりました。

実際、あらゆる面において物事の複雑さは増しており、以前よりも将来の予測を立てることが困難になっています。2010年代に突入して以降、現在の状況から「VUCA時代」の到来したと言われています。

2.VUCAはビジネスシーンで使用されている

もともと軍事用語だったVUCAという言葉が、ここ最近の経済状況において注目を集めるようになったきっかけが、2014年に開催されたASTD国際大会です。

約4万人の会員を世界100カ国以上に持つアメリカの人材開発機構が開催する国際会議で、人材開発や訓練などについての話題で盛り上がりました。その際に、時代の変化を表す言葉としてVUCAが登場したのです。

それ以降も、2016年のダボス会議やその他の国際会議でVUCAは取り上げられています。世界的なビジネス界の大物にも取り上げられており、それをきっかけに今では一般のビジネスシーンでもVUCAという言葉を聞くことが珍しくなくなりました。

3.VUCAで変わっていく組織

21世紀に突入して以降、世界は急速にグローバル化が進み、経済状況の変化も目まぐるしく展開しています。

日本の組織についても例外ではなく、これまでは終身雇用制度で将来が安泰だったのが、数年先の見通しも立たなくなっているのです。実際、まさか倒産するはずがないと思われたような大企業さえ倒産する時代が到来して四半世紀が経ちますが、バブル崩壊という一時的な現象ではなく、今日まで状況が続いています。

また、ITやAIの技術が進歩したことによって、さまざまな市場においてこれまで通用していた既存のビジネスモデルが通用しなくなっています。新たなビジネスモデルの構築を余儀なくされ、まさに栄枯盛衰といった状況です。

家電といえば日本だったのが、今では中国や韓国にその座を奪われつつあるのが良い例でしょう。これまであるビジネスの領域でトップに君臨していた企業が、数年以内に落ちぶれてしまうことも十分考えられます。

このように、今の時代は10年前と比べても変化のスピードがより一層早くなっています。これから先、どうなるか、わずか数年先の見通しも立たないという不安定な環境が既存の組織の変化を促しており、それをもって今の時代を「VUCAワールド」と呼ぶようにもなってきているのです。

そこで、ここからはVUCA時代を表す事例を、VUCAのそれぞれの要素ごとに詳しく見ていきましょう。

VUCAの「V」、Volatility(不安定性)

世界情勢の変化や科学技術の進歩の激しい時代におけるビジネスには、多くのリスクがつきまといます。

社会状況が変化することにより、人の価値観にも変化が表れ、これまでのように消費者のニーズに決まったものはなく、人の数だけニーズが存在するという多様化の時代だからです。

ニーズの多様化が進めば市場も細分化されるため、これまでのようなマーケティング手法では変化に対応できない状況になったと言えるでしょう。

たとえば、SNSの影響力を考えてみるとよくわかります。15年ほど前に始まったSNSは、今では世界中に大きな影響力を持つ大きな市場となっており、各プラットフォームが巨大な顧客を持っています。SNSのマーケティングへの活用は、これからの商品やサービスを考えるうえで欠かせません。ここまでSNSがビジネスシーンに大きな影響力を持つようになるとは、少し前まで考えられず、大きな不安定性をよく表す事象ではないでしょうか。

VUCAの「U」、Uncertainty(不確実性)

政治や経済を取り巻く状況は21世紀に入って大きく変化し、ますますグローバル化が進んでいると言えるでしょう。

また、気候の変化や深刻な自然災害など世界中で問題も起こっています。現在の世界情勢は予断を許せない状況であり、さまざまなリスクを想定してその対応策を練らなければなりません。

科学技術の発展のおかげで世界のグローバル化がここまで進んだわけですが、現実には、恩恵だけでなく悪影響も表れています。国同士が利害関係ゆえに争い、保護主義の傾向を強める大国も表れ、経済的に見ても決して楽観できる状況ではありません。近年のアメリカの状況や、EUを離脱したイギリス、安全保障問題で揺れる東アジアの状況を見ても、それは一目瞭然でしょう。

こうした要素が世界の経済にも悪影響を及ぼし、市場は激しく乱高下を見せています。これほど不確実性に満ちた状況では、数年先の未来を予測することも極めて困難です。

VUCAの「C」、Complexity(複雑性)

既存の枠組みに収まらない事業が続々と増えています。

この状況において、組織だけでなくビジネスにおける個人の課題もこれまでより一層の複雑さを見せていると言えるでしょう。

イノベーションという言葉は以前から叫ばれてきましたが、従来のイノベーションとも異なるリバース・イノベーションやオープン・イノベーションなどの新しい考え方にも注目が集まっています

日本のビジネスシーンへの影響が大きい例では、アメリカからやってきた自動車の配車サービスや、民間の住宅を宿泊施設として提供する民泊ビジネスなどがあります。これらは、これまでの概念を大きく変えるイノベーションです。

実際、日本でもこれらのサービスが急速な普及を見せていますが、一方、社会制度がその変化のスピードに追いつけず、さまざまな問題を引き起こしています。

たとえば日本では、法整備ができていないがゆえに民泊ビジネスの普及が進まないという課題がありますし、法律ができたと思ったら、民泊ビジネスは年間180日という上限を課されるなど、新しいビジネスが普及する機会を妨げているような状況です。それも、あらゆる要素が複雑に絡み合う現代のComplexityゆえでしょう。この傾向はこの先もますます高まると予想されます。

VUCAの「A」、Ambiguity(曖昧性)

プロダクト・ライフサイクルという言葉がありますが、これはどんな商品やサービスも永続しないことを意味しています。

何事にも寿命があるということですが、このサイクルが従来よりも短くなっているのが現在の状況です。現在のビジネスシーンで既存の成功パターンが通用する分野は減少を続けており、長期的な予測はもとより短期予測も困難な、非常に曖昧性の高い時代になったと言えるでしょう。

したがって、これからのビジネスでは、曖昧で不確定なことに対しても短時間のうちに意思決定していくことが求められます。

4.超高齢化社会でこそ必要なVUCAに対応するマインド

世界中で高齢化は進んでいますが、特に日本では超高齢化社会と言えるほどに高齢化が深刻で、何よりも先に考えなければならない課題です。

「人生100年時代」や「働き方改革」などと政府も構想を掲げていますが、ビジネスでもそれを見越した経営戦略と商品開発が必須となるでしょう。

たとえば、労働力の問題です。超高齢化社会ともなれば、これまでと同じように労働力を確保することができなくなります。となると、定年を延長してシニア世代の力を活用するのか、外国人労働者の力に頼るのかなど、どうやって労働力不足を解消すればよいのか早急に決断しなければならない状況です。VUCA時代を生き抜く考え方が問われています。

5.VUCAフレームワークとOODAループ

VUCAフレームワークとは、VUCAの4つの要素を体系化する見方です。このフレームワークに「OODAループ」というプロセスを当てはめて、不安定な状況のなかでも最良の選択をできるようにすることが、これからのリーダーに求められていると言えるでしょう。そこで、その「OODAループ」について詳しく解説していきます。

「OODAループ」とは、Observe」、「Orient」、「Decide」、「Act」の4つのプロセスをサイクルで回していくことです。

このサイクルによって物事に取り組む癖をつけると、先の読めない状況でも何が最善の選択なのか素早く意思決定できるようになり、実行までのスピードもアップします。そのためには、上司の指示を待ってから行動するのではなく、個々の人間が目標達成のために自ら意思決定を行い、素早く実行に移すことが必須です。

上司の指示を待ってからでないと行動できない従来型の意識では難しいですが、このサイクルを実施できるようになれば、不安定な状況においても柔軟に考え、素早く実行できる機動力が高まります。その結果、競合他社よりも高い優位性を獲得することにもつながるでしょう。VUCAフレームワークにぜひとも活用すべき考え方です。

ビジネスでは「PDCAサイクル」が以前から活用されています。先ほどの説明では、OODAループもPDCAサイクルのようなものとのイメージを抱くかもしれませんが、両者には明確な違いがあることに注意しましょう。PDCAサイクルは、計画や業務の内容を見直しながら、同じ失敗を二度としないように業務を改善していくためのプロセスです。

つまり、計画に則って業務を改善することがPDCAサイクルの目的です。個々人のビジョンに従ってスピーディーに意思決定できるようになることが目的のOODAループとは、的も判断基準も異なることがわかるでしょう。また、不確実性の高いことについて適用するOODAループと違って、PDCAサイクルでは先に決められた計画に従って行われるため、サイクルを毎回完結させるのが基本です。OODAループの場合、状況が変化するのに合わせて途中でも何度も再考します。

このように、PDCAサイクルとOODAループは大きく性質が異なるため、どちらか二者択一というものではありません。状況の変化するスピードが早く、不安定な要素の多い状況のなかで高い優位性を獲得したいのならOODAループを採用すればよいですし、現在の決まった状況において最大のパフォーマンスを発揮する場合にはPDCAサイクルを用いればよいのです。

OODAループを活用するためのポイントを押さえておきましょう。組織全体に導入する場合は、まず、ビジョンや目標を明確に設定し、全体の認識を共有しておくことです。また、意思決定をスピーディーに行えるようにするためにも、行動のもととなるルールを設定しておくことも大切でしょう。個人の持つ暗黙知が共有できるように環境を整えておくことで、そうではない環境での場合よりも圧倒的なスピードで意思決定できるようになります。

OODAループは、特別な理論ではなく、これまで誰もが意識せずにやってきた意思決定のプロセスです。ですので、特別なスキルというわけではないのですが、これを無意識下に置いておくのと顕在化して意識的に実行していくのでは、結果に大きな差が生まれます。OODAループの意義を理解し、スピーディーな意思決定という目的に照準を定めることで、そこに至るまでの情報の収集や分析などのやり方にも差が出てくるでしょう。

6.まとめ

不安定、不確実、また、複雑かつ曖昧なのがVUCAの時代です。この時代においてリーダーに求められているのが、どんな状況においてもスピーディーに判断し、意思決定に至ることです。それをできるようになるためには、OODAループの活用が欠かせません。またOODAループをスムーズに回すためにも、ビジョンや目的を明確に設定し、チーム全体で認識を共有しておくことも忘れないでください。
(2020年現在)

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